Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル おまけV

    “別のお話・V
            *セナくんBD記念作品(DLF
 

 例年になく暖かい年の瀬は、それでももうクリスマスを前にしていて、随分と押し迫って来てはいる。
「ねえねえ、年賀状はもう書いた? ボクも昨日、ママと一緒におイモ判でヒヨコさんを彫ったんだよvv そいでね? 蛭魔くんとかモン太くんとか、鈴音ちゃんに姉崎センセーとか、あとあと…進さんにもね、明けましておめでとうってゆうの、いっぱいいっぱい書いたのvv///////
 マシュマロみたいにふかふかな頬を真っ赤にし、きゃ〜い o(><)o//////と 嬉しそうな声を出す可愛い子。つややかでふんわりした髪に、黒みが滲み出して来そうな潤みの強い大きな瞳と、柔らかそうな小鼻、口許。ずんと小柄で肩や腕脚も華奢で、おまけに口調や仕草が何とも稚
いとけない、覚束ないそれなものだから。その姿を見かけた大人たちからは“可愛いわねぇvv”とまず間違いなくうっとりされ、同じ世代の腕白たちからは…嫉妬もあってか“いじめてやれ”という対象にされかねない困ったちゃんで。そんな腕白たちの筆頭なように見えながら、
『何でそんな奴らと同じことをせにゃならん』
 へその曲がったところがそんな方向へと発動されているらしい、この年齢で既に“陰のフィクサー”でもある蛭魔くんに上手に庇われているお陰様。幼稚園時代からこっちは、さしてしつこく苛められるということもないままに、愛らしいお陽様みたいな笑顔を絶やさぬ、天然天使のような男の子。その名を、

  「こばやかわ せなですvv

 はい、よく言えましたvv にっぱりと笑ったお顔がまた、冬場の陽射しに暖められて、何とも愛らしいことvv
“………ホンットに俺と同じ年なんかな、こいつ。”
 何ですよ、ヒル魔くん。このお話ではそういう設定だって、ちゃんと打ち合わせしたじゃないですか。
こらこら まま確かに、先に並べた外見や言動が示す通り、それはそれは幼く愛らしい、無垢で無邪気な淡雪みたいに ほわほわしたセナくんと、こちらのヨウイチくんとは…同い年とは思えないほどにその個性が正反対。外見の愛くるしさという点では、こちらの坊やも負けちゃあいません。柔らかそうな金髪に、ちょこっと吊り上がって力みの鋭い、淡い金茶の瞳をしていて。端正なお顔に肌も色白、華奢で厚みのない肢体は、若木のように撓やかながら儚げでもあり…と。春蘭秋菊、千紫万紅、それぞれなりの趣きにて、それはそれは格別なランクの見目を誇る、美少年さんたちなのだけれども。

  ――― 問題なのは、その中身。

 片やが砂糖菓子みたいなセナくんならば、こちらさんは、唐辛子の王様“ハバネロ”みたいな。油断は禁物、うかうかしてると火傷をするぜとばかりに強かな、尖んがり坊やのヨウイチくんであり。子供とは思えないほど物知りで、子供とは思えないほど機転が利くヨウイチくんからしてみれば。話し言葉も舌っ足らずで、少々とろい…もとえ、大人しいセナくんが、幼さが過ぎて何とも頼りない対象に見えてしまうのも、しようのないことってもんでして。
“そうか。そんな俺たちだから、相対的なギャップがますます広がってるんだな。”
 こんな風に筆者と段取りを語れるくらいですから
(笑)、まったく両極端な人たちだって訳ですが。

  ……… ところがところが、とはいえど。

 そうまで個性・特徴・能力に開きのある彼らであれど、どういう訳だか…妙なところが“お揃い”で。先の春頃、初夏の連休辺りから、まずはヒル魔さんチのヨウイチ坊やに、大きなお友達が出来た。裾の長い“白ラン”っていう詰襟学生服を翻し、バイクを乗り回してる高校生のお兄さんで。年の差、優に八歳はあろうかというほどの年上のお兄さんでありながら、口の減らないヨウイチくんから、しっかり尻に敷かれて…あ〜いや、あのその。
(笑) 時々は喧嘩もしながら、まま仲良くしていらっしゃるご様子で。そしてそして、そのお兄さんと同い年だというのに…こちらは今時には珍しいくらいに生真面目な石部金吉。アメフトにしか関心が無さそうな、寡欲で無口な お侍さんかお不動さんみたいなお兄さん、進清十郎さんという人と、ひょんなことから知り合って、そのまま“お付き合い”を始めたセナくんだったりし。いかにも恐持てな第一印象にはさすがに怯えたセナくんだったものの、噛みつかんばかりに吠えたおすワンワン…もとえ、大きな犬から庇ってもらったのを切っ掛けに“この人いい人vv”という想いが急成長。それからそれから、一気に急接近した二人であり、

  『愛くるしくて小さくて小さくて。
   こんな存在がいるなんてと、冗談抜きに目眩いがした。』

 初対面の場で既に様子が妙だった彼を…というか、お相手のセナくんの身を慮
おもんばかって、桜庭さんが何がどうしたのかという筋道を一応訊いてくれたところが、そんなお返事。一皮剥けば何のことはない、愛らしいものへの縁がなさ過ぎた進さんは、あまりに愛くるしいセナくんに突然出会ってしまったことで、一遍に“虜”になってしまったようなものだったのだとか。
“…ちょっと待て。”
 はい? ヨウイチくん、何か? ………あ、そかそか。君もそれはそれは愛らしい子ですのにね。なのに進さん、自分へはそんな反応は一度として見せなかったぞと、何だか収まらないんですね。
“別に収まらないって訳では…。”
(ぶつぶつ…)
 でもね。大人も顔負けなほどお口が回るわ、今時のものにも精通しているわ。そういうのをひけらかして余裕で大人をやり込めたりするのを、生意気な子供だと叱られるのへ、更に容赦なく畳み掛けるような“おマセさん”だった訳ですからね、君は。阿含さんや桜庭さんのような奥行きのある人たちならともかくも。質実剛健、猪突猛進な進さんが、そういうややこしい子へ“可愛らしい子”って認識を持つのは、ちょっとキツイことなのかも。ヨウイチくんの側だって、むしろ“対等な扱い”をされているのが小気味よくて、それで納得してたんでしょうに。
(笑)
“う〜〜〜。”
 ま、そういう訳で。大きくて優しい進さんとの“年の差”交際が始まったセナくんですが。そうなると不思議なもので、どちらかといえば可憐で頼りない儚げな子だったもんが…何となく。甘えたさんなところはそのままながら、妙に強腰なところも見せるようになって来たから、いやはや、これも一種の“感化”というものなのかしら? いえ“誰からの”とは、あえて申しませんけれど…。
(苦笑)





            ◇



 そんな、小さなセナくんと大きな進さんの方の“年の差カップル”のお二人は、クリスマスを前にしていつもとは違った逢瀬を続けている。だって、あのね? 進さんのいるアメフトのチームが全国大会の東日本代表にまで勝ち進んでね、文字通りクリスマスに開催される“クリスマスボウル”っていう、全国大会の決勝戦を控えているから。練習に集中しなくちゃいけないからっていうのと、この頃では陽が落ちるのがあんまり早くて。小さなセナくんを、寒くて真っ暗なそんなお外で待たせてはおけない。それで、試合が終わるまでは逢えないってことになっていたのだけど。いきなりメールもくれないくらいに極端な徹底さを見せた進さんに、小さなセナくん、びっくりしちゃって。お邪魔をしちゃいけないっていうのは判っているけど、でもね。セナくんはあまりに小さかったから。あんなにあんなに優しかった進さんとのギャップがあまりに大きくて。こんな急に…お声さえ聞けないようになっちゃったのが、お前なんか知らないよってそっぽを向かれたみたいな気がしたの。それで、寂しいようって、事情を知ってるヒル魔くんに話したら、ヒル魔くんと仲良しな葉柱のお兄さんが、セナのこと、進さんのガッコまでバイクで連れてってくれるようになったのvv うん、お邪魔はしないの。ベンチのとこで、頑張れ〜って応援したり、腕立て伏せとかする時は、進さんの背中に乗っかったりするのvv そんな日々が3週間も続いた頃合いにね…?

  「あのねあのね、ヒル魔くん。」

 今日も今日とて、お昼までの授業が済んで、終礼のHRも済んで、さて。もうすぐ冬休みだからか、今週からは給食もないままに、全校生徒が ばらばらわらわらと校庭へ出て来るお昼時。同じ教室にいた筈なのに、随分と遅れて昇降口に姿を現したふかふかな髪の小さな男の子。彼を待ってた、こちらは金髪の坊やが、メールチェックでもしていたか、片手で操作していた携帯電話の液晶から顔を上げ、
「何してたんだ?」
 今日はコンビニに寄ってから行くぞ。この時間帯だとファミレスは混んでるから、弁当買ってって向こうで食おうと。本日の“王城ツアー”の段取りを告げる彼だったのだが、
「あのね、今日は良いみたい。」
「………はい?」
 不意を突かれたからか、珍しいほど良い子のお返事を返したヒル魔くんへ、
「さっきね、進さんからのメールが来てたの。」
 そう言って“はい”と、自分の携帯を差し出したセナくんであり。そこには、

  【着信;from 進さんvv(セナくんによる名前設定です)
      今日は れんしゅうがないので、こちらからむかえに行く。
      じゅぎょうは 昼で おわりと きいたので、
      そのまま校門のところで むかえを まっていなさい。】

 いかにも彼らしい“単刀直入”。漢字が少ないのは桜庭さんからの指導が入ったからだそうで、それにしたって、
“練習がない?”
 全国の高校生たちの頂点に立つ者を決める、最終決戦の“クリスマスボウル”をこの週末に控えていて、それはないんじゃなかろうか。怪訝そうなお顔になったヨウイチくんの細い眉がほぼ自然な反射にて“ひくり”と震えたのは、耳に馴染んだイグゾートノイズが聞こえて来たからで。
「あ、葉柱のお兄さんだ。」
 彼がいつもやってくる側を無邪気に指差さしたセナの仕草を追うように、ぐりんとそっちを向いたヨウイチくん。高校は試験休みに入っているので、こんな早いお時間にお迎えに来られる彼なのは不思議なことではないとして、
「よぉ…って、どした? 妙な顔してよ。」
 いつもだったら、ご挨拶代わりの“遅いっ”だの“急げっ”だのいう、可愛げのない喧嘩腰の一言がかかるのに。今日はというと、見慣れない携帯を手に黙ったまんま。何だか様子がおかしい坊やだと、いち早く気がつく辺りが…お付き合いの深さを忍ばせる。それへと坊や本人が答えようとしかけたのとほぼ同時に、
「あっ!」
 傍らに立っていたセナくんが、ぱぁっと愛らしいお顔を輝かせて。

  「進さんだっ!」

 それはそれは嬉しそうに、小さなお手々で指差して見せたのは道の向こう。丁度、葉柱がやって来たのとは反対方向、彼らが顔を向けていた正に真っ向からやって来た人影があって。スプリンターのような一気呵成の全速力でこそないものの、ざくざくと一定のリズムを保ったままに、マラソン選手並みの速足でやって来る、なかなか走り慣れたランナーさん。段々と近づくにつれて、ウィンド・ブレイカーとスェット姿の彼が、どこの誰なのかもはっきりしだして。
「………進だな。」
「うん。進だ。」
 一体どこから走って来たやら。もしかして…バスやバイクを使うのが当然なほど遠い、王城高校からのジョギングということが、あながち不可能ではないくらいに とんでもない体力の持ち主さんなのは重々承知。だからね、そんなことくらいでは今更驚いたりしないだろう、彼をよく知るヒル魔くんと葉柱さんが。それでも何だか、

  「「……………。」」

 揃って口ごもってしまったほど、ちょっと様子がおかしかったのには、それなりの理由
わけがあったのだそうで。
「進さんっ!」
 大好きな人が逢いに来てくれたから、セナくんとしては“嬉しいようvv”と、そこは素直に満面の笑みでのお出迎え。此処ですようと両手を頭上で大きく振り回し、そんなおチビさんがちゃんと見えていように…仁王様のお顔は全く動かない無表情なまま。
“まあな。あのペースのジョギング途中で、ニタニタ笑える奴の方が異様だっての。”
 それは仕方がないよなと、一般常識を持って来て、何とか自身を宥めたヨウイチくん。そんな彼らの目前まで、ざくざくと軽快に駆けて来たお兄さんは、ひたっと足を停めるとその場で“ほうっ”と一息、大きな吐息をついてから、
「遅くなったな。」
 まずはセナくんへ、そんな声をかけてやる。スェットの上着の襟元についていたフードを、大きな片手で背後へと撫で下ろし、その同じ手で襟元に埋めていたらしきタオルを引っ張り出して、ざんばらな前髪の下、額に浮いた汗を拭う。暖かい冬だといっても、空気は乾いているし、冷たい風だって吹いていて。それなりの気温だというのに、かいた汗が滴り落ちている運動量の物凄さ。だというのに、全く疲弊憔悴してはいない“けろり”とした表情なままなのが これまた凄い。
「遅くなんかないですよう。」
 今さっき終わって、出て来たばかりですもんと。セナくんがニコニコしながらお返事をし、
「進さん、お昼は食べましたか?」
 ボク、今日は給食がなかったからお家で食べるんです。一緒にセナのお家に帰って食べましょうvv そんな風なお声をかけながら、とてとてと間近まで駆け寄って、進さんの大きな手を取っているセナくんであり。おおおう、何だか手慣れてないか、そのナンパぶりvv
おいこら
「…それでは。」
「じゃあ、明日ねvv ヒル魔くんvv
 ちゃんとそこに居ることには気づいてたんですよと、軽く顎を引いて葉柱さんやヒル魔くんへの会釈を示した進さんと。無邪気にも“バイバイvv”と手を振ってから、そのまま進さんの大きな手へ、半分ぶら下がるようになって掴まったままで歩き出したセナくんと。自分たちと同じ年齢差の組み合わせとは到底思えないほどに、極端な大と小の背中が遠ざかるのを見送りながら、

  「アレって、さ。」
  「…うん。」

 二人が…ご当人へは触れないままで看過して通した“とあるもの”への見解を、やっとのことで口にする。(ex,王様の耳はロバの耳 or 王様は裸んぼうだぞぉ)
「形や大きさから見て、やっぱ“アレ”だろうな。」
「だと思う。○○○水族館の売店の包装紙がかかってたしさ。」
 ただ手ぶらで走って来たとしても、その距離を考えると大したものなのに。その上に、彼は…とある大きなものを小脇に抱えていたのである。
“確か、王城は…。”
 クリスマスボウルに備えての合宿中な筈で。レギュラー選手たちは全員、学内のクラブハウスだか男子寮だか、宿泊施設に泊まり込みで調整中だと聞いている。ということは。今日の練習が自主トレ・モードになったというのは、まま あり得るとして、だがだが。自宅に戻って“あれ”を手にし、それからあらためて此処へやって来たとまでは思えないから。

  “…随分と前に買っておいて、合宿所に持ち込んでたりして。”

 同室だった奴は、あの進が…? いやいや、そんなの気のせいだ、幻覚だと思い込もうとして大変だったのではなかろうか。ただでさえ決勝前で、精神的な重圧も何かと多かろうに。そこへと加えて、そんな余計なプレッシャーを与える訳には行かないからと。幾分かは“慣れている”桜庭さんが、監督から言いつかり、見張り役も兼ねての同室だったりして? だとしたら、苦労が絶えないアイドルさんだなと。此処までの一連の想像図、相手と答え合わせとして語らい合うまでもなく、ほぼ同じこと、胸中にて転がしていた、ヒル魔くんと葉柱のお兄さんであったりし。


  「同んなじの買ってやろうか。クリスマス・プレゼントに。」
  「いや、俺は要らねぇから。」







            ◇




 さて、翌日。セナくんは朝っぱらから それはそれは上機嫌で、

  「あのねあのね、進さんたらね。
   昨日はセナのお誕生日だったからって、
   そいで わざわざガッコまで来てくれたんだってvv

 プレゼントはね、セナよりずっと背の高い、大っきな大っきな“こーてーペンギン”のぬいぐるみだったのvv こーんなこーんな大っきくて、まるで電信柱みたいでね? ふかふかで やーらかくて、ベッドに置いて抱っこして一緒に寝てるの〜っ o(><)o//////と。それはそれは はしゃいでいたセナくんであり、

  “こんなチビさんにうつつを抜かしとる奴がエース張ってるチームが
   クリスマスボウルで優勝なんてしたら、何かしら罰が当たるんじゃないか?”

 神様なんて信じてないのに、そんなことをついつい思ってしまった、ヒル魔くんだったそうである。
(笑)



  〜Fine〜  04.12.21.


  *セナ誕当日の作品が“これ”になろうとは。
(笑)
   でも、あのエンペラーペンギンのどデカいぬいぐるみは、
   なんか魅力的だなと思ってやまなかったりするのです。

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